アメリカでハタラク人にインタビュー！第3回【理学療法博士　瓜阪美穂さん】

アメリカでは、日本からの駐在員として勤務している人やアメリカ現地で採用された人など、多くの日本人が様々な分野で活躍されています。このコーナーでは、アメリカで働く方々に“ハタラク”楽しさや難しさなどをお伺いし、ご紹介しています。

生涯をかけてずっと医療の勉強を続け、
習得した知識を一人でも多くの方にお伝えしていきたいです。

どのようにして理学療法士になられましたか？

理学療法士という職業は、大学時代の球技体操のコーチの勧めで興味を持つようになりました。もともと医学部に進学するつもりでしたが、専門分野は決めかねていたので、スポーツ好きの私にとっては興味深い仕事内容でした。大学を卒業した後、南カリフォルニア大学の大学院に進学しました。そして、2009年に同大の理学療法博士課程を修了し、米系の病院を経て2010年より日本クリニックにて勤務するようになりました。アメリカで理学療法士になるには国家資格が必要ですし、カリフォルニア州のように州によっては法律の試験を受ける必要がある場合もあります。

現在のお仕事について教えてください。

私は臨床整形外科学認定理学療法士で、日本クリニックで理学療法士として勤務する傍ら、アルヴィン・エイリー・アメリカン・ダンスシアターや、アヴェニューＱで活躍されているダンサーの方々のセラピーも行っています。日本クリニックに来院される患者さんの症状は、ぎっくり腰、腱鞘炎、捻挫、四十肩、肩こりなど様々です。どの症状でもまず初めに行うことは、動作の障害となる原因を探ることです。そしてその原因を治療していくことで関節可動域の広大、筋力強化、麻痺の回復、痛みの軽減など運動機能を改善し、歩行練習、動作練習などによって能力を向上していきます。対象者の身体能力、生活環境などを十分に評価し、それぞれの目標に向けて適切なプログラムを作成します。

どのような治療をしていらっしゃるか教えてください。

一般的に理学療法士とは、ケガや病気などで身体に障害のある人や障害の発生が予測される人に対して、運動療法や超音波等の物理療法で、患者さんが自立した日常生活が送れるよう支援する医学的リハビリテーションの専門家です。実際にどのような治療を行うかと言いますと、ケガをされた直後や炎症が強い時には、まず氷や超音波を用いた物理療法で炎症などを抑えていきます。その後、状況に合わせた治療やリハビリテーションを行います。また、慢性的な問題に対してはマニュアルセラピーを多く用いています。マニュアルセラピーというのは手を使った治療方法で、患者さんの体に直接触れ治療していく方法です。そっと触れることもありますし、強めに刺激を与えて骨と腱の間などを滑らかにしていく場合もあります。人間の脳には体の地図のようなものがあり、体に触れることにより脳に情報を伝えることも同時に行っていきます。

日々どのように患者さんに接していらっしゃいますか？

激しい痛みの緩和、慢性的な痛みを持つ方、生活習慣や性格なども違うため、個々に合った治療やリハビリテーションのプログラムを組んで、行なっていきます。治療期間も人それぞれ違うので、細かく診断していきます。

仕事の楽しさや喜びはどのような時に感じていらっしゃいますか？

様々な治療がありますが、例えば、足の骨とふくらはぎが密接に関係することが科学的に証明されていて、実際に足の骨を動かしてあげることにより、つま先立ちをする力が強まってくるのを患者さん自身が感じ、改善していきます。このように、患者さんを診ていて、体の少しの動きで、機能が改善するところを見つけ、患者さん自身もそれを実感された時にやりがいを感じます。

クリニックで開催していらっしゃるセミナーについて教えてください。

病気になった時にいくのがクリニックと思う方がほとんどだと思いますが、当院では、予防医学にも力をいれております。病気になる前に定期的な健康診断などを行ない、自分の体を良く知ることを当院のセミナーを通して学んでいただければと思い、当クリニックの米国登録栄養士宮下先生と一緒に、月に一回、健康や病気の予防をテーマとしたセミナーを開催しています。これまで、「ダンサーのためのストレッチとウォームアップ」、「冷え性」、「フォームローラーを使った筋肉トレーニング」などのセミナーを開催してきました。7月12日には「良質の睡眠とバランスのよい食事」のセミナーを開催します。たくさんの方に参加していただけると嬉しいです。このセミナーを通じて、健康管理・維持に関する情報をたくさんの方にお伝えしていきたいです。

今後のお仕事の抱負について教えてください。

一生かけても勉強しきれないほど、体の機能はとても深いです。体の各機能の活かし方を少しでも多くの患者さんに伝えられるようになりたいと思っています。

〔取材・文〕
QUICK USA, Inc.
菰田久美子